脱プレミア銘柄。マイテイスティングの方法。 (3)

更に「整理する」−あなたの芋焼酎観を明らかに

では、各麹ごとに具体的銘柄名を挙げ、私が感じたおおまかな印象を書いていこう。

追記: このチャプターでは、「コガネセンガン・米麹系の銘柄」で芋と麹の種類を固定、そこで各種麹菌ごとでどれだけ味の幅があるのか、具体的銘柄で例示することを試みた。各麹毎に比較する「軸」は異なる。白麹は「柔らかさ」、黒麹は「味の湿度」、黄麹は「軽やかさ」を念頭において以下を書いてみた。

まずは白麹について。これは一般的に優しくスムースな銘柄が多いが、たまに、力強さを感じさせる銘柄に出会うこともある。私見だが、最も振幅が大きく、向かうベクトルも様々で、呑んでいて面白い銘柄が多い。白麹造りの銘柄はは概ね芋そのものの特徴が素直に出やすい、と思う。振幅の広さを感じさせるキーとなる銘柄を挙げていけば、優しさを感じさせるものには例えば「さつま島美人」(長島研醸)、強靱な味わいの代表格では「不二才」(佐多宗二商店)がある。

次は黒麹。これはどうしてもアクが強く、エッジの立った銘柄が印象に残る。味そのものの押し出しが強く、記憶に残りやすい銘柄が多い。有名な「萬膳」(万膳酒造)や「村尾」(村尾酒造)も黒麹だ。だが裏を返せば、「あるエリアの枠」にはまりやすい、という側面もあるように感じる。そんな中で個性を出している銘柄といえば、濃密かつたっぷりとした甘さを感じさせて艶々しい「百合」(塩田酒造)、味も薫りも激しく力強いが全体的な印象はからりとした「蔵 純粋」(大石酒造)などがある(但し「蔵 純粋」の芋はシロユタカ)。

追記: 先のチャプターで「コガネセンガン・米麹系の銘柄を中心に据え」と書いておきながら、シロユタカを使った銘柄を出すあたりが苦しい。「百合」と対極の「からっと乾いた感じの黒麹銘柄」の例を出したかったのだが、自分が呑んだ範囲では他に思いつかなかったのだ。いい例があれば御教示頂きたいくらい。

最後に黄麹であるが、これは日本酒に使われている麹だけあって、軽くて上品、薫り控えめの呑みやすい味を想定される人が多いのではないか。「富乃宝山」(西酒造)や「」(大海酒造)のメジャー化に伴い、そういうイメージはかなり浸透しているように聞く。思えば「魔王」も黄麹らしい。しかし一方で、黄麹は焼酎を醸造する麹の中で最も歴史が古い麹でもある。そんな歴史の重みを感じさせる銘柄として、「燃島」(萬世酒造)や「アサヒ」(日当山酒造)の野性味溢れる味わいは異彩を放っている(但しいずれも白麹とのブレンド)。黄麹は上品なばかりではなく、銘柄によっては時に他麹では出し得ない重みを出すこともある。

追記: 黄麹の重鎮、「萬膳庵」の味わいの記憶が殆どないのだった。

それぞれの麹は味わいが特徴的とはいえ、当然、単純に三つのエリアには区切れない。例えば、「味のずぶとさ」という軸で考えた場合、傾向的には黒麹の銘柄の方が「ずぶとい」が、白麹の銘柄全てが黒麹銘柄と比して「ずぶとくない」ということでもない。とはいえ、おおくくりにでも、種麹菌別に各銘柄の特徴が頭の中でマッピングできると、予備知識がなくても、例えば「どの種麹菌で、どの程度ずぶとい」という風に位置づけが行いやすくなる。

例として、先に挙げた銘柄を中心に、わかりやすさ優先でマッピングしてみる。
「甘くマイルドな銘柄」を左下に、「辛くて硬質な銘柄」を右上に、という具合に私が記憶している味わいをマッピングしてみた。こんな感じになった。

グラフ

<注>各マークは種麹菌の種類を示す。(●;黒麹、○;白麹、▲;黄麹)

追記: このグラフは軸のとり方を間違っていたのではないかと思う。「甘くて硬質」な味も「辛くてマイルド」な味も想像しにくいわけで、当然の帰結として、グラフの右下と左上が寂しくなる。

「甘くマイルドな銘柄」といえば「さつま島美人」。主張しない、という特性がそのまま美点となっている銘柄である。一方「辛くて硬質な銘柄」の最右翼は「青酎」。但し麦麹の銘柄である。「辛い」「硬質」という表現は決して適切ではないが、「甘い」「マイルド」という概念からは二光年くらいかけ離れている。

マッピングしてみると判るのだが、実際、銘柄をどう配置しても自分の記憶にしっくりこない。このグラフの作成にも結構な時間を費やしている。

追記: ちょこちょこと並べては直しを繰り返し、本当にえらく時間が掛かった。

また、この手のグラフのいい加減さに輪をかけるのが、芋焼酎の呑み方の多様性だ。
ワインなどとは大きく相違する点であり、また、芋焼酎が持つ魅力のひとつでもある。厳密に考えるのならば全てストレートで呑んで「公正」な評価を心掛けるべきなのかもしれないが、実際に芋焼酎を呑む時に全てストレートで呑む人は稀だろう。普通はそれぞれの銘柄に合った呑み方や、好きな呑み方で呑む。また、例えばお湯割りという呑み方は、単に薄めるだけではなく、積極的に薫りや味わいを増幅する手段でもある。よって、このグラフの配置は呑み方ばらばらの印象評価でしかない。「さつま島美人」(お湯割り)と「魔王」(ロック)が異種格闘戦をやっているわけである。

以上のようにあえて単純化したが、マッピングした目的はひとつ。皆さんに違和感を感じてもらうことにある。違和感の原因は2つあると予想できる。

ひとつは、「平面の中で表せるほど芋焼酎は単純なものではない」という違和感。
どんなに誠実に点をプロットしても、要素の近いもの同士が近い味である方が稀だ。二次元の世界なんかに納まるもんか、という芋焼酎の叫びが聞こえてきそうである。ちなみに、ワインなんかでは味わいに含まれている要素が複雑であるほどトレビアンだという。芋焼酎でそんな「複雑な」銘柄を一つ挙げるとするなら、個人的には「なかむら」(中村酒造場)を挙げる。白麹。最近入手しにくいのが誠に残念な銘柄でもある。

追記: 総じて白麹銘柄の方が味が複雑だと思う。

もうひとつは、「俺様の感覚と全然違うやんけ、こいつ舌おかしいんとちゃうか」という違和感である。
是非突っ込みを入れて欲しいと思う。これは別段私がマゾだからではなく、突っ込みを入れることで皆さんが考えている味わいのマップが明らかになる、という効果を期待してのことである。

追記: 自分の性格がSかMかという自己紹介が世にはびこっているが、ナンセンスだ。Mを極めれば最高のSになれるという話を聞いたことがある。何を言っているんだ俺は。

重要視する軸を挙げて自らオリジナルのグラフを作るのも一興かもしれないが、決してお薦めはしない。面倒だからだ。
しかし、芋焼酎の持つ味の幅に思いを馳せながら呑んでいけば、自然と頭の中で平面に表せない「味わいマップ」が出来上がってくる。それがきっと、皆さんにとっての芋焼酎観である。芋焼酎観をかたちづくるためのひとつの切り口として、麹による味わいの差に自覚的になることは有効だと思う。(以下更に続く)