試飲会に行ってみた

初出:2003/10/01

ベストで臨む

育ちは自慢じゃないが悪い。
バイキング形式ならば全ての料理という料理を
とりあえず皿一杯に網羅しなければ落ち着かない。
品がない。がつがつしている。
かような批判にはただ黙って俯き肯くのみだ。
だから、食べ放題・呑み放題という文字に滅法弱い。

追記: さいきんはだいぶ、おとなの食べ方がわかってきた。

先日、よく訪れる酒販店の一つ、
「名酒館タキモト」さんに行ったところ、
焼酎試飲会が催されるとのパンフレットを見つけた。
焼酎試飲会。それは即ち焼酎死ぬほど呑み放題会。
そう解釈した私が飛びつかないわけがない。
パンフレットは麗々しく「森伊蔵」「伊佐美」「村尾」などと、
出品される焼酎の銘柄が並べられている。
200種類の焼酎が出されるらしい。
時間は13:00〜17:00までの4時間。
果たして何種類呑めるか。ハンターの血が騒いだ。

ところで、焼酎のレビューをやっていながら何だが、
私は酒に強くもない。
一日に一合を超えて呑む日は滅多に無い。

追記: このペースは全然今も変わらない。酒に関してはつくづく安上がりだと思う。

呑みすぎると睡魔に引きずり倒され人事不省に陥る。
ここは是非呑みすぎたいところだが、潰れて眠られても迷惑だろう。
そこで一時的に酒に強くなる策を講じた。
まずは登板日に向けて肩をつくるピッチャーの如く、
開催日にコンディションを合わせる。
そして当日は朝から暖めた牛乳を飲み、まず胃壁に膜を張る。
あとは、ウコン錠剤(アルコールの分解を早める)、
サクロン(胃壁第二の膜)、ユンケル(景気付け)、エビオス錠(意味不明)
等々目に付くサプリメント類を片端から飲んでドーピング完了。
気分は準備万端である。

早めの昼食で軽く腹を五分目程度に微調整し、いざ、会場へ。
到着は開場直後くらいの時間、
会場の中からは早くもざわざわとした喧噪が聞こえる。
既に多くの人が入っているようだ。そしてその中は・・

焼酎サロン

焼酎の楽園であった。あるわあるわ。

焼酎群

※ごく一部。

パラダイス・オブ・焼酎。喜んで万歳三唱をする。
早速がつがつ呑むぜえ、と勇んでいきり立ったが、
各銘柄それぞれ一升瓶2本はある模様。
この分ではすぐに無くなることもなさそうだ。
ようやく理性が戻る。
購入候補や隠れた銘柄の発掘を目的としなければ。
受付で貰った出品リストを見る。芋だけで・・105種類。
どこかで呑んでいたり、既に買っている銘柄を省いても
60種くらいは未経験だろう。
いずれにせよ4時間に亘る長期戦だ。ゆっくりと味わうとするか。
お湯割りもできるが、一々お湯で割るのが面倒なので
全てロックで呑むことにする。
グラスを片手に、並んでいる端の方からちくちくと攻めていく。

最初は、呑んだ銘柄全部覚え込んでやる、
よってメモなど不要、と考えていたのだが、
周囲の様子を見ると、結構皆シリアスである。
まずはグラスを揺らして薫りを堪能し、
唇を湿らせる程度でほんの少し焼酎に口をつけ、
虚空に目を遣りしばし黙考の後、
難しい顔でリストになにやら書き込んでいる。
その様は焼酎との真剣勝負そのものだった。

追記: この後も試飲会は何度も行ったが、この時の参加者が一等真剣だったように思う。ちょうど焼酎ブームが本格的に爛熟期を迎えるにあたって、一発当てたるぜ的参加者が多かったせいかもしれない。

私も銘柄数が10本を超えたくらいから、
酔いも手伝って混乱気味になってきた。
ちょっと休憩。端に並べてある席に腰掛け、
供された薩摩揚げを食しながら簡単なコメントを書き出す。

開始1時間後。人々は更に増えている。
受付嬢に訊いてみると300人を超す入場者らしい。
広いとは言えない会場はまさに芋洗いの様相を呈している。

人々

※ごく一部。

来場者は老若男女、ほぼランダムにばらついている。
なるほど。焼酎人気を支える層が厚いことを実感する。
ジェネレーションギャップという言葉はここにはない。
このように世代の垣根を超え、自分の意思で集まるような機会は、
なかなかないのではないだろうか。
顔ぶれだけ見れば、何の集団か皆目見当もつかないだろう。
また、話を訊いた感じでは飲食店勤務の方が多かったようだが、
一方で、呑めれば何でもええ、って方もかなりいらっしゃった様で。
確かに酔っぱらうことを目的とすれば、
コストパフォーマンスはかなり良い(入場料¥1000)。

2時間経過。皆、そろそろいい具合に出来上がってきた。
テーブルをくっつけ、数々の持参した折詰を肴に宴会を始める方々。
愉しそうで結構なのだが、こらこら。
「森伊蔵」の一升瓶を自分たちのテーブルに確保するのはよしなさい。
やはり持参したベビースターラーメンをひっきりなしにつまみ、
ぐるぐると呑み歩く若人よ。
何故ベビースターラーメンなのだ。

混雑の中、袖振り合うも多生の縁というが、
流石に同好の士であって、袖触れれば焼酎噺に花が咲く。
ここは焼酎サロンだ。
見知らぬ隣人と蘊蓄を傾けあう。
こういうところで訊く蘊蓄はなかなか良いものだ。
個人の好みを話すような雰囲気で押しつけがましくない。
焼酎の徳、スケールのなせるわざなのだろうか。
呑み放題の場にも関わらず、殆どの人が乱れていないのも感心する。
皆、上品である。呑み慣れている。
悪酔いして変に目立たなくて良かった。

だが、こっちの呑む方はペースが落ちてきた。
都度ミネラルウォーターで口中をクリアにしようとするのだが、
舌に徐々に蓄積された芋々感覚が残り続け、味覚の邪魔をする。
しかしともかく終了時刻まで粘り、
結局、呑んだ銘柄は約40種類。
これ以上呑んでも、蹂躙され尽くした味蕾では
碌に判断もできなかったと思う。

会場を後にするまで、努めて冷静さを保っていたが、
酔いを醒まそうと喫茶店の席に着いた途端、
前後不覚状態に陥り、倒れ込むように爆睡。
物凄い勢いで頭をぐるんぐるん廻しながら眠る私の姿は、
激しい闘いの末、燃え尽きた戦士のように映っただろう。
どこが。

追記: この部分は誇張無しで、本当に頭が廻っていた。
旨かった銘柄ベスト3

なにしろ後日、リストに書き込んだコメントを読んでみると、
「芋々してる」
「芋度高し」
「芋っぽい」・・・・
何だそれは。
それでも記憶を基に、これは旨かったと思われるものを挙げてみる。
ただ、やはり様々な呑み方をしてみないと真価は判らないものだ。
一口目は旨くても、呑み続ければ印象が変わるものも結構ある。
だからファースト・インプレッションベスト3。
やや地味どころ・癖が強めなもので印象に残っているものを選んだ。

燃ゆる想ひ(相良酒造)
深いコクとドライ感のバランスがとれていたように思う。
「これは、んまいっ!」と心がぶるぶるっと共振した。

夢鏡(植園酒造)
「侍士の門」(大久保酒造)的な分厚い旨みの焼酎ってないですかねー、
と訊いてみて出てきたのがこれ。
これも25度とは思えない太さ。甘くなく、ずしんとくる旨み。

そして・・
青酎(青ヶ島酒造)

人々

※東京都青ヶ島(八丈島の南の島)産の焼酎。

この銘柄は全然マイナーじゃない。
しかし、今まで何故これを呑まなかった!と後悔した程のインパクト。
麦麹使用。焦がしたような大麦の味わいが強く、新鮮。
麦茶のような香ばしさが長く残る。少々高価いのが難点か。
また、この銘柄はロットによって味が結構ばらつくらしい。
有名な麦焼酎「焼酎屋 兼八」(四ッ谷酒造場)が、
これと同じカテゴリーの味わいだ。

追記: ここで挙げた3銘柄は全て今でもお気に入りである。

このように慌ただしい場で呑んで印象に残るのは、
ゆっくり味わう類の焼酎ではなく、個性が強い銘柄。
自己主張が強い奴程、目立つ。
では、そういう奴と親友になれるかといえば、そうとも限らない。
一見控えめだが、飽きが来ない、味のある奴。
そういう奴を一呑みで見つけるのは難しい。
瞬間でその本質まで見抜く眼力・舌力、
これはやはり場数をこなさないと身に付かないものなのか、
もしくは生来のセンスがものを言うのか、それとも育ちの問題か?