November 2, 2006

身体中凝りまくっておる

どうやら疲労は身体の内側へと染み込んでいくものらしい。
そして一度染み込むとなかなか抜けてくれない。

帰宅が24時を廻る期間が続いている。
ここ4ヶ月くらいだろうか。
肉体的体力にはまあ、自信はあるが、
貴重な休日を使っても、もはや恢復が追いつかない。
緑色のヘルスバーが徐々に、確実に減ってきているのがわかる。
あとはメラミ一発程度で戦闘不能だろう。

しかしその辛苦も残す所あと少しとなった。12月の商品発売までだ。
だが越える山はまだいくつか残っている。
なんとか身体を保たせたい。マッサージに行くことにした。
エロくはない。普通のマッサージである。
PCにばかり向かっているわけではないのだが、肩と首の張りがかなりキツい。
全身の血の巡りも、いかにも淀んで滞っている自覚がある。

マッサージといえば一時期は整体によく通っていたのだが、
気分を変えたいのと、より強力に揉みほぐしてほしいのとで、
大阪の京橋にある「タイ古式」マッサージに行くことにした。

雑居ビルの薄汚くうらぶれた階段を上がる。
硝子越し、店内が薄暗いのがわかる。ドアを開けると、
東南アジアらしい調度品があちこちに配されているのが目に入った。
待合で暇そうにTVを見ていた店員が慌てて立ち上がる。
「イラッサイマセ」
店員さんは全てアジア系の人である。客は私一人らしい。
何かよくわからない言葉が飛び交っている。

マッサージ自体は期待通りだった。強力だった。
お姉さんと呼ぶにはやや語弊がある女性が木製のスティックで
的確に足の裏を突いてくる。
「タイシキハ、ハジメテデスカ」
「あ。はい。思ったよりもマイルドというか。
 もっと激しいものかと、(ブスリ)アアッ!」
「ダイジョウブデスカ」
「(苦悶)ええ。もっと激しくやっちゃって下さい(ブスリ)ウウッ!」
「イタイノハ、ヨワッテイルコトデス」
おなじみの足裏の部位と対応する臓器の図を見せられる。
特に湧泉のあたりが痛む。腎臓が弱っているらしい。

最も痛かったのは何故か右足のふくらはぎだった。
そのスティックを横持ちにして、膝裏からふくらはぎへのラインに沿って
押し付けるような感じで動かすだけなのだが、これがまた異常に痛い。
「これ。なんで。こんなに。痛いんですかね」
「ムクンデマスネ。カナリカタイデス。ココトカ(ゴリゴリ)」
「・・・(ベッドの縁を必死で握って悶える)」

あとは全身施術なのだが、その手の趣味がない私は
タイ式ならではの、全身を足で踏みつけられる体験は初めてだ。
「肩と背中。あと首。そこらへん重点的にお願いします」
凝っているだけあって、少々の圧力では全く応えない。
膝乗り状態で、無遠慮にも片方の膝に全体重を掛けられたりしたが、心地よいだけだ。
筋肉がほぐれていく感覚に身を任せる。
ビフカツの下ごしらえで肉を良く叩くのに似ているな、と思う。

ニートはけっして他人事ではなく

「シゴト、イソガシイデスカ」
「まあ、そうですねえ。平日は睡眠時間5時間切ってますね」
「オカシイオモイマスネ」
「それは」
「ニホンノヒト、ミナイソガシイイイマス」
「確かに」
「ナンノタメニ、ソンナニシゴトシテルノカ、ワタシイマモリカイデキマセン」
「・・・」
「ヒトリグラシデ、ヒッシデシゴトシテルナンテコト、
 ワタシノクニデハカンガエラレナイデス」
(※その人はネパール出身らしい)

以前も似たようなことを書いたが、
あたりを見渡してみて思うのは、自分も含めて、
仕事をする目的が壊れてしまっているのではないか、ということだ。

全ての人が、とは言わない。
だが働きすぎで、だいじにすべきところをだいじにしない、という風潮は
若年層にも多く見られる。ニートとの二極化が激しい。

働きすぎるということ。働かなさすぎるということ。
この二者は殆ど同じところから根を張っているのではないか。

伊丹十三の父である、映画監督の伊丹万作が
人生の目的は、という質問に対し、
「遊ぶことです」と答えたという。
理由は炭坑で働く人に訊いてくれと。

「自己実現」「勝ち組」などといったキラータームや、
充分すぎるほどの豊かさが、私たちの目を曇らせているように思う。

外から見れば、日本という国は、
豊かで、そして不幸に見えるのかもしれない。
そんなことを思いながら、私は黙っていた。
例えマッサージ嬢が日本語に堪能であっても、
彼女の素朴な疑問に対し、うまく答える自信はなかった。

マッサージが終わった。微笑みに見送られて外に出た。
余韻に浸りつつふらふらと歩いていると突然、右足のサンダルが脱げた。
いつのまにか足のむくみが取れ、
サイズががばがばになっていたのだ。

何故か右足だけが異常にむくむ生活を送って、
そしてずっとそのいびつさを看過していた自分を少し嗤った。

関連エントリー:Hard times are over, for a while.

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